概要

専門家によるオンライン百科事典プロジェクトNupedia(ヌーペディア)を前身として2001年1月、ラリー・サンガー (Larry Sanger) とジミー・ウェールズ(Jimmy Donal "Jimbo" Wales)により英語でプロジェクトが開始された。ウェブサイトには広告は一切掲載せず、資金的には個人や団体などからの寄付により運営している。

記事の自由な複製・改変を認める「GFDL」というコピーレフトなライセンスとインターネットを通じ自由に文章の編集が行えるウィキシステムを採用し、誰もが新規記事の執筆や既存の記事の編集を行えるようになっている。 編集への参加に関しては一切無料であり、アカウント匿名で可)を取得することが推奨されるが、なくても参加できる。参加者の共同作業で記事は日々追加・更新される。記事のジャンルは幅広く、一般の百科事典にはない項目(トピック)も多い。インターネットのニュースでも、ウィキペディアが参考資料として紹介されることもあり[3]大本営発表的になりがちな人物や団体などの公式サイトに比べ、“様々な観点を公正に扱う”という記述の方針により中立的で、詳細かつ網羅的な情報を知ることができるということから「調べ物」という目的で利用するインターネットユーザーも多い[3][4]

しかし専門家による査読がなく、不特定多数の利用者が投稿するというシステムゆえに、情報の信頼性や公正さなどは保証されておらず(Wikipedia:免責事項)、ウィキペディアの方針に沿わない利用者の編集により問題が起こることもあり、いくつかの問題や課題も指摘されている[5]詳細は#問題点の節を参照)。

活動の規模

2001年1月15日英語版が発足、その後多くの言語へ展開し、2010年8月30日現在、273言語で執筆が行われている。ただしこのうち継続的な活動が行われ1000項目以上に達しているものは、190言語ほどである。ウィキペディアは多言語展開に力を入れており、常に新しい言語プロジェクトが立ち上げられてきたが、初期には比較的簡単にそれが行われていたために、参加者が集まらない・いなくなった、などの理由で閉鎖されたり凍結されたプロジェクトもある。現在では、新たな言語でウィキペディアを設立する前にウィキメディア・インキュベーターというサイト内で試験運用を行うことになっており、2010年8月現在で約300言語の「試験版ウィキペディア」がある。

2010年8月現在、約270の言語版の記事数の総計は1600万以上に上り、最も多い英語版が約340万件、英語を除く諸言語版の合計が約1320万件となっている。またAlexa.com の全インターネットを対象とするアクセスランキングでは、20位以内に入っている。

活動規模が最も大きい英語版では1300万のアカウントが登録されている。しかし、アカウント登録なしで編集に参加できることと、作成されたアカウントの数割が実際には使用されないことから、正確な利用者数は把握できない。すべての言語版を合わせると2500万を越えるアカウントが作成されているものの、言語版ごとに重複してカウントされているため、これも実際の執筆者数とは関係ない。データベース・ファイルを分析したエーリック・ザクテ (Erik Zachte) の統計によれば、5回以上編集・投稿に携わったユーザーの総数はプロジェクト発足以来2004年12月30日までで3万2000人強とされるが、この統計でも未登録ユーザーの活動量が未集計のほか、古いバージョンのソフトウェアを用いて活動しているウィキペディアについては分析の対象外としている。

Alexa.com の統計によれば、wikipedia.org の閲覧数のうち 60% 前後が英語版へのアクセスである。日本語版、スペイン語版ドイツ語版へのアクセスがこれに次ぐ。とはいえ英語版と他言語版の規模の差は、プロジェクトの進展とともに漸進的に埋まりつつある。英語版の項目数と、2位以下の言語版の項目数合計を比較すると、かつては10位までを合計してようやく英語版に並んだものが、2007年1月には2位から5位までの4プロジェクト合計と等しくなっている。現在英語を含む35の言語が10万項目以上を保有している。ただしこの中にはヴォラピュク版のように、注目を集めることを目的として、ほとんど内容のない粗末な記事を、プログラム (bot) を使って数万項目も濫造しているところもある。

参加者が何らかの編集・投稿を行い、データベースへ保存した回数を参考にすると、プロジェクト発足以来、9億回以上の編集・投稿が行われてきたことになる(これは未登録ユーザーによるものも含まれるが、ソフトウェアのバージョンの差から来るデータの欠落がある)。

主な特徴

既存の百科事典や他の類似のプロジェクトと比較した場合、ウィキペディアには次のような特徴がある。